前と同じように、無自覚でむずがゆいことを言う爽に、なぜか櫂が赤面する。
「………爽」
「ん」
「俺、今めっちゃ恥ずかしいねんけど」
「何でこの状況で恥ずかしいんだよ」
本当にわかっていないらしく。
その表情のない顔を見て、息を吐いた。
「………もーええわ。あと、今回は爽の言うこと一切聞かんから」
(わざわざ気づかせても俺にええことないし)
後ろで爽が何か言ったが、櫂は無視した。
そして。
「あ……櫂、さっきなんて言ったの?」
カノンの声とかぶって聴こえなかった。と言う愛に、人知れず胸を痛めることとなる。


