「……俺のこと、爽から聞いたん?」
答えられなくて俯くと、察したのか櫂は続ける。
「俺、親父いなくなって、ショックで引きこもっててん。いっつもひとりやった」
小学生がやで、笑えるやろ。なんて櫂は言うけど、私が笑えるわけがない。
「中学になってからは学校行くようになったんやけど、普通のトコやったから親がデザイナーなんて言ったら、目立って」
取り入ってブランド物を欲しがる女たち。
そして、調子にのるなと罵倒する男たち。
カンタンに想像できる。
「それやから、友達1人も出来なかってん」
その声は、波の音にかき消されるぐらい小さくて。
私が顔をあげると「ださいから、見んといて」と言って抱きしめられた。


