あー……ダイエットしとけばよかったなー。
でも、爽の作るお菓子おいしいんだもんなー。
私が太ったとしたら、爽のせいだ、絶対。
「愛ちゃーん?」
「え、あぃッ?」
気づくと、櫂が近くで私を呼んでいた。
笑ってる。
「あぃッて!かわえーなぁーもー」
ぎゅうぎゅう抱きついてくる櫂に少し赤面して、冷静になるように周りを見た。
……あれ。
「……爽、は?」
いつのまにか爽の姿がない。
「んー…カノン迎えに、行かせたでー…」
私の肩に顔をうずめる櫂の声が、眠そう。
「………櫂、カノンって?」
「俺の唯一の遊び相手ー。ゴールデンレトリバーなんやけど…」
………犬……。
私が息をのむと、櫂は離れた。
また、無理した笑顔。
つられて私まで眉が下がって、それを見て櫂がまた苦笑。
気まずそうに頭をかきながら、話し出す。


