『父親がいない』 その言葉に、事実に、体が震えた。 「子供の頃、病気で亡くなったようです。母親は忙しく、かまってもらえなかったみたいで」 その気持ちはよくわかる。 誰もいない家。 さみしくて、くるしい。 「金持ちだから、と遠巻きにみられて友達もできなかったらしく、長期の休みはいつも1人だったと」 寂しそうに見えたなら、多分それだからでしょうね、と爽が言う。 そうする爽の顔も、寂しそうで。 私は、ある決意をした。