櫂はしばらく考えていたが、突然手を合わせる。
「悪いけど…ごめんなぁ」
眉を下げて笑いながら、言った。
「……やっぱりダメ?」
「せやなぁ………あ、別にその二階堂ちゃんがダメってわけちゃうで?勝手な俺の都合やねん」
「都合…?」
なに?、と聞くと、私のほうに手を伸ばしてきた。
頬に触れる。
視界のすみ、爽の不機嫌な表情が見えた。
「今、ちょっと気になってる子、おってなー……」
するり、と指を滑らせると、離れていった。
その指には、髪の毛。
「ついとったでー」
「あ、ありがとう」
「ん、どーいたしマシテ」
………気になってる子って、誰だろう。
聞こうと思ったけど、もう話は次の話題にうつってしまっていて、聞けなかった。


