「こんな風に放課後を
過ごすのも数えるだけだね」

智世が2階の窓から
部活に顔を出しに行っている海の背中を見つめながら

あたしに言ってきた

知らないよ
あと何回かなんて

智世はいいよね
海とも朝倉とも良い思い出がある

高校生活を楽しく生きた

あたしは何もない

楽しい思い出もなく
卒業して

そして楽しくもない夫婦生活を迎えるんだ

「私ね、樹里が羨ましかった
綺麗で、はっきりと物事を言える姿が格好良いって思ってたの
それに……

身体が丈夫なところ

私と違い過ぎて
輝いて見えた」

智世が振り返った
瞳には
涙が溜まっていた

「健康体ってだけで
私にはすごくその人が
輝いて見えた」

智世の涙が頬を伝って
下に落ちる

制服の襟に涙が落ちると
布に染みを残して消えた