「サンキュー!
今、すんげぇ
甘いモンが食いてぇって
思ってたんだよ

小久保って気がきくなぁ」

クラス一のお調子者である朝倉大輔が
あたしの手にあったチョコの箱を
奪い取った


荒々しく包装紙を破くと
高級チョコレートが
朝倉の口の中へと
投げ込まれた

「あ……ちょっと!」

「ん? なに?」

復元不可能となった包装紙と
結び目のなくなった赤いリボンが
教室の床に落ちていった

まるでスローモーションだ

満足そうに頬張っている朝倉の
後方には

床に落ちた包装紙を
寂しそうに見つめている智世が見えた

海にあげるはずの高級チョコが

海の親友である朝倉大輔の口の中で
溶けている




顔だけしか良いところのない男に
海への想いを食われた気がした