もう一度 笑って

「男は泣くものではない
背中で語れ」


「は?」


「親父の口癖
ようやく理解した

親父もいろいろと言い訳したかったんだろうなって

親父は仕事以外なーんもできない馬鹿男だってわかったら

今まで突っ張って、反抗して……適当に人生を歩もうとしてた俺も馬鹿らしく思えた
ま、そういうことだ」


「は?……それが私の見合いを壊した理由にはならないんですけど」


「嫌だったんだろ?」


朝倉がきょとんとした目で、あたしを見てきた


え? 今の説明でわかんないの?
と言わんばかりの表情をしている


わかるわけないじゃん


見合いの「み」の字もなかったよ
あいつの説明に!


ただの過去話を聞かされただけだっつうの


「姉貴が泣いたんだ
自分のせいで、小久保の未来がなくなっちゃうって
好きでもない男と結婚しちゃうから、どうにかして…って」


「はあ……で、どうにかしてくれたわけ?」


「そう、俺がどうにかしましたよ」


朝倉がにこっと笑った
それはとても優しくて、今までの朝倉の笑顔で一番素直な気持ちが出ていたように思えた