もちろん、忘れていたわけではない。



ちょっとだけ抵抗してみたかっただけだ。




どういうわけか、昨日の会話の流れ上、俺はこいつの恋愛に協力してやることになってしまった。




ああ、嫌だ。


もちろん嫌だとも。



もし時間が戻せるのなら、昨日の10時くらいの自分の口を塞いでやりたい。




「お前、その結城ってやつと同じクラスなのか?」




そう尋ねると、美波は控えめにうなずいた。



こいつ、結城ってやつの話題になると気が小さくなるよな…




「だったら声かけりゃいいじゃねえか」



「………そんなこと、私ができると思う?」



「……………

………すまん、忘れてくれ」




想像して三秒でアウトだった。



そいつの前で真っ赤になったまま固まっている美波の姿が思い浮かんでしまった。