「まったく…あいつは………」



困った様子で頭をかく担任。


つい気になって口が開く。



「あいつ、どうしたんですか?」



「ああ、高橋か…

いや、あいつの進路でな…」



勇人の言っていた通りだった。


進路。



そういえば、雨宮と進路の話をしたことはなかった。


あいつはあれで頭がいい。


結構レベルの高い大学を狙えるはずだが、あいつは何をもめているのだろう。



「雨宮の進路が何か問題でもあったんですか?」



「………そういえば、お前と雨宮はいとこだったな。

それなら少し聞いてほしいんだが………


ああ、まずはこれを見てくれ」



そう言われて、夏休みに行われた進路希望調査書を見る。


そして、目を疑った。



「これ………本気であいつが?」



驚いた。


だってそこにあったのは大学でもなく、就職でもなく、ただ一言。




『私は大人になんてなりたくない』




たった、それだけだった。