千鶴は線香に火をつけると、それを供え、手を合わせた。



それと一緒に、俺も手を合わせる。






一日経って、俺と千鶴は翼くんの墓の前にいた。



昨日、千鶴が泣き疲れた後、明日一緒に墓参りをしてほしい、と言われたのがきっかけだった。




「………ふぅ」




合わせていた手を離し、一息つく千鶴。



千鶴の中で弟のことは整理がついたのか、それは俺にはわからない。



ただ、昨日までの千鶴はいない。



それだけはたしかだった。





「私、翼のことを本当に大切に思っていました」



帰り道、歩きながら千鶴が口を開いた。



「でも、いつの間にか翼を苦しめていたのかもしれませんね。

私、姉として失格です」



「そうは思わないけどな。

お前はいい姉だよ」



「………ありがとうございます」




放課後に来た、ということで日はすでに落ちかけていた。


真っ赤な夕陽。


それに映える千鶴の横顔は、かわいいとか、そういうのじゃなくて………


本当に…綺麗に見えた。