家に着いて、自分の部屋のベッドに横になっても頭の中で整理がつかない。



浮かぶのはやっぱり千鶴の顔。



泣き顔と、笑顔と。




あいつに似合うのは笑顔だ。


それは絶対に間違いない。



だから、あいつの泣き顔なんて見たくなかった。


あいつの悲しげな顔なんて見たくなかった。




けど、見てしまった。


もう、二度とこの記憶は消せないだろう。



俺は千鶴の悲痛な顔を忘れることはできそうにない。




『先輩!』



いつもそうやって、明るい笑顔を見せてくれる彼女。



『先ぱーいっ♪』



そう言って、俺に元気をわけてくれる彼女。




千鶴はいつだって俺に元気をくれた。


温もりをくれた。




だけど、俺は…




「………っ!」




ドン!!



イライラして思わず壁を叩く。



ちくしょう。


ちくしょう。



もらうだけもらっておいて…



俺は何もしてやれないのかよ。