「ひっく…ひっく………」



隣で美波がすすり泣く声がする。



俺はその声を聞きながら、眼前に映る写真を見ていた。



佐山翼くん。


千鶴の弟の話は聞いていたが、まさかこうして会うことになるなんて思いもしなかった。



「ねぇ…純一………

私…何て声をかけたらいいの…?

こういうとき、どうするの…?」



人の死、というものをおそらく初めて見たであろう美波。


涙で瞳を潤ませる美波は明らかに動揺していた。



「……………」



チラッと千鶴を見てみると、何故か泣いていなかった。


後夜祭では泣いていたのに、今の千鶴は泣いていなかった。



泣き疲れたのだろうか。


現実をうけいれられないのだろうか。



わからない。


わからない。



母さんを亡くした時、俺はどういう気持ちだった?


俺は泣いていたのか?


泣き疲れていたのか?