妹なんていらない

俺の言葉に、美波は少し呆けたような表情を浮かべた。



しかし、それも一瞬。


覚悟を決めたのだろう。



美波は、ニヤッと口の端をわずかに上げ、笑った。




「巡礼様」



はっきりと、透き通るような声で美波は言葉を紡ぐ。



「あなたのご信心はあまりにも行儀よく、お上品でございます。

聖者にだって手はございますもの、巡礼がお触れになってもよろしゅうございます。

でも、接吻はいけませんわ」



俺も美波の演技に負けないよう、しっかりと言葉を返した。




「聖者には唇がないのでしょうか、それに巡礼には?」



「いえ、お祈りに使わなければならないのですから、唇はございます」



「それならば、私の愛する聖女様、私の祈りを聞き届けてください。

でなければ、私は絶望してしまいます」