妹なんていらない

高熱の体に鞭打ち、立ち上がろうとする結城。



………くそ!


たしかに、このままじゃ演劇を終わらせるしかなくなる。


でも、今までこいつらは…美波はあんなにがんばってきたってのに………



向かいの舞台袖を見ると、すでに美波は舞台に出ようとしていた。



まずい。


向こうにはこっちの異常事態が伝わってないのか?



「ゴホッ!ゴホッ!」



「無茶だ!!
お前は寝てろ!!」



「で、でも………」



結城は俺の言葉に対し、必死にもがこうとする。



どうする?


このまま結城を出して………




………って、俺は馬鹿か?


こんな状態で演技なんてできるはずがない。



なら、代わりのやつを出すか?


いいや、ダメだ。


主役であるロミオのセリフ、動作を全て覚えているやつが他にいるはずは………



「………!」



………いた。


一人、いるじゃないか。