妹なんていらない

それが何だか気になったのか、俺はベンチから立ち上がると結城のもとへ歩み寄った。


結城は近づいてくる俺に気づいていないようで、何だか上の空、といった感じだった。



「おい、何してんだ?」



「………え?

あ、ああ…っと、せ、先輩…」



うん?


何だかいつもの元気がないな。



「どうした?

今日が本番だからって緊張してんのか?」



「いえ、そういうわけじゃないんですけどね………

ほら、僕…緊張とかしないタイプですから…」



「そういえばそうだな…

じゃあ、どうしたんだ?
いつもよか元気がねぇぞ」



「そ、そうですかね…?

あ、はは…気のせいですよ…」



ぎこちなく笑みを浮かべる結城。


何だ。


何だこの違和感………いや、何というか、嫌な予感、か?



「じゃ、じゃあ先輩…

僕、練習あるんで………」



そう言って、結城は校内へ入っていった。


その後ろ姿に、俺の嫌な予感はさらに増していった。