妹なんていらない

雨宮と勇人がいなくなり、俺はぼーっとしながら人混みを見ていた。



何だか、久しぶりに一人になった気がする。


厳密に言えば、目の前には人混みがあるわけだから一人になったとは言い難いんだが。



何というか、何も考えずに一人でいられるのは久しぶりだった。



今日が美波たちの演劇は本番であるからして、俺はもう練習に付き合う必要はないから演劇のことは考えなくていい。


そして、今日ばかりは勉強するような連中もいないからそれも考えなくていい。



ああ、自由だ。


ビバ自由。





………と思ったのは束の間。


とある人物の登場でその自由は無くなった。




「ん………?

あれは…結城………か?」



人混みの中に結城の姿を見かけた。


見たところ一人で、何だかぼーっとしている。



………ぼーっとしている?


あの結城が?



いつもはハチャメチャなくらい元気だってのに。