妹なんていらない

「賑わってんなー」



次の日、観覧しかすることのない三年生である俺、勇人、雨宮の三人は校内にあるベンチに座って涼んでいた。


目の前には人、人、人。


ただの文化祭、と甘く見ていたが、結構大がかりなもので、人の数は相当なものだった。



「うわあ、なんか人酔いしそう。

ねえ高橋くん。
私のために人払いしてくれない?」



「俺はお前の付き人じゃねぇ」




たしかに、さっきから雨宮目当てで付近をうろつく連中が見えた。


ちらほらと、「なんで高橋ばっかり…」だとか、「美波ちゃんを妹に持っていながら…」だとか、「千鶴ちゃんに好かれておいて…」だとか聞こえるのは空耳であってほしい。



「あはは!

高橋くん、恨まれてんねえ」



「まったく見に覚えのない誤解で何故恨まれなきゃならないんだ…」



「知らないのか?

お前、結構な数の男子にうらやましがられてんだぞ」



「ぐ………」



無駄に情報通な勇人に言われると、何だか身の危険を感じる。



何故だ。


千鶴はいいが、美波や雨宮なんて一緒にいても疲れるだけだぞ。


そこらへん、理解しろよ男子諸君。