妹なんていらない

「と・こ・ろ・で…

劇の方はどうなの?
美波、うまくやってる?」



雨宮はさっき、一瞬だけ見せた悲しげな表情から一転、ニヤニヤし始めた。



「ああ、もう完璧だよ。

………って言っても、俺が相手してるとこしか見てないから何とも言えないんだけどな」



俺相手に演技する美波はだいぶ様になっていた。


見た感じでは、白々しい演技、というわけではなく、役に入った演技、という感じだ。


なんだかんだで、美波は演劇の才能があったのかもしれない。


まあ、今さらあいつが演劇部に入るとは思えないが。



「そっかそっか。

なら安心だね。
高橋くん、練習お疲れ様」



「ああ、本当に大変だった。

俺、無駄にロミオのセリフ全部覚えたんだぜ?

美波のやつ、私との絡みだけやってもロミオには成り切れない!、とかむちゃくちゃ言いやがって…」



「あはは!

じゃあ、いっそのこと高橋くんが劇やれば?
美波もそれなら緊張しないでしょ」



「ばあか。

そんなことする気もないし、そもそもできるわけないだろ」



「そっか、そりゃそうだね。

あーあ、私、高橋くんが貴族みたいな格好するの見たかったなあ」



「頼むから脳内イメージだけで抑えてくれ…」



過去にそんな格好をしたことが二、三回あるんだが、あれは相当恥ずかしい。


あんなのもう二度とやってたまるか。