妹なんていらない

いつも通りに学校を終え、帰宅した俺。


美波は文化祭の練習があるらしく、帰るのは遅くなるそうだ。


久しぶりの自由。


俺にとって久しぶりのゆったりとした勉強時間。



「さあて、鬼の居ぬ間に勉強やっちまうか」



そう言って、俺は鞄から教科書類を取り出した。


そのとき、ふと鞄の中にあった薄い紙束が目にとまった。



「なんだ、台本か」



ロミオとジュリエット。


俺は以前、好奇心程度に読んだことがあるのだが、あまり理解できなかった。



家柄の異なる、相反する二つの家系の男女の恋。


好きになることさえ許されない恋。


文字通り、禁じられた恋。



そんなの、時代背景が昔だし、現代を生きる俺には遠い話だった。



現代には昔のようなはっきり区切られた身分なんてものはないし、ロミオとジュリエットのようなことはありえない。


そもそも、ロミオがそうであったように、死ぬほど誰かを愛する、というものが俺にはよくわからない。



俺にもいつか、そんな女性が現れるのだろうか。


俺もいつか、そんな恋愛をすることがあるのだろうか。