「わぁ………」



ようやく意識が覚醒したらしい美波に花火を渡してやる。



美波は、おそらく今年初であろう花火に目をキラキラと輝かせていた。



俺は、そんな美波の横でしんみりと線香花火に火をつける。



「あっ、線香花火!
わ、私もやるっ!」



美波は今持っていた花火が終わるやいなや、俺が持っていた二つ目の線香花火を奪い、火をつけた。


パチパチと音をたて、線香花火が光り出す。


美波は、その線香花火を見ながら、見たことのないような柔らかい笑みを浮かべた。



「うわぁ…きれい………」



まるでため息をつくかのように言葉を漏らす美波。


ふと、いつもの美波とのギャップに俺は、不覚にもドキッとしてしまった。



「私ね、花火の中で線香花火が一番好きなの」



「ん?
何でだ?」



「だってさ、こんなに小さいのにこんなにきれいなんだよ?

何だか、見てるだけであったかくならない?」



「それは………ちょっとわかる気がするな」



小さい、小さい線香花火。


見ているだけで、ちょっと切なくなり、ちょっと儚く思い…


ちょっと、あったかく感じる。