妹なんていらない

千鶴の話をまとめると、次のようになる。



千鶴には三つ下の弟がいるらしい。


三つ下、ということは弟は中学一年生。





………のはずなのだが、現在小学六年生なのだそうだ。



千鶴の弟は生まれつき体が弱く、小さいときから入退院を繰り返していた。


そのため、出席日数が毎年足りず、とうとう小学六年生のときに留年して、現在、二回目の六年生の生活を送っている。


けれども、今現在も体調がもどらず、入院しているそうだ。




「家に居ても、私はどうしたらいいのかわからないんです。

弟ばかりが不幸な目にあって、私はこんなにも幸福な生活を送っている。

そんなの許されるんでしょうか?

私だけ幸せでいいんでしょうか?」



千鶴は表情を曇らせながら言葉を続けた。



「………私は怖いです。

弟に恨まれているんじゃないかって思うと………


本当に…怖いんです」




そして、千鶴は自嘲するかのように笑った。




「私、弱いですよね。

弟から逃げたくて。

弟の話を聞きたくなくて。

嫌なもの、嫌いなものから必死に見ないように、見ないようにって………



たまらなくなって、家に居るのが嫌になって、それで………本当に逃げてきました」