妹なんていらない

とまあ、俺はそのままの流れで本気で果物ナイフを買いかけた(千鶴が必死に俺を止めたために買えなかった)。




………雨宮、命拾いしたな。




とりあえず、雨宮の闇討ちは保留にしておくことにした。




「先輩、次はどこに行きましょうか?」



その声に我に返る。


今の今まで気づかなかったが、千鶴は何が目的で街に来ていたのだろう。

隣を歩く千鶴のことが気にかかり、俺は口を開いていた。



「そういえばお前…何で休日のこんな朝早くから街にいたんだ?」



「え?」



千鶴は何だかひどく情けない声を出した。



「いや、俺は美波に追い出されたからいるわけだけど、お前はどうしたんだろうって思って」



すると、珍しく千鶴は黙ってしまった。


どうした、と聞こうと思ったが、何だかいつもと様子が違っていたので、俺は聞くのをためらってしまった。



「……………」



「……………」



お互いに沈黙が続く。


気づけば俺達の足はいつの間にか止まっていた。