妹なんていらない

「先輩、早く早く!」



そう言って千鶴は俺の手をグイグイ引いていく。


相変わらずだが、こいつのどこにこんな力があるんだろう。


背も低いし、体は小さいし、腕も、足も、細くてすらっとしている。


こいつももう少し身長があれば相当魅力的な女の子になれただろう。



「先輩、早く歩いて下さいよー。

デートの時間は有限なんですよ?」



「いや、まずデートじゃない」



「ひどい!

私とは遊びだったんですね!?」



「何故そうなる!?

遊びも何も………っていやいや、完璧遊びだろ」



先輩後輩で遊ぶのだって、そう珍しいことでもないはずだ。



「先輩のケダモノ!

わ、私は先輩を見損ないました………」



「ああ!
なんか俺が悪者にされている気がする!!」



違うんですよ、通行人の方々。


こいつが一人で暴走しているだけなんですよ。


だからそんな侮蔑の眼差しで俺を見ないで下さい。