妹なんていらない

俺は次に呼吸を確かめた。


美波の口元に自分の耳をもっていくが、案の定呼吸をしていない。



「美波………!」



こんなときでも、俺は妙なことに頭だけは落ち着いていた。


次に何をすべきなのか、誰に言われたわけでもなく分かっていた。




「純一!!」


「先輩!!」



勇人と千鶴の声が聞こえた。



俺は、二人の声を聞きながら、美波の首を持ち上げ、気道を確保していた。



そして、美波の鼻をつまみ、自分の口を美波の口へともっていく。






     ◇





………俺は、馬鹿だ。



人工呼吸を繰り返しながら、そんなことを思った。




一人にするべきではなかった。


無理矢理に押し切ってでも、美波の側にいるべきだったんだ。



美波は泳げない。


それは分かっていたことなのに。



泳げない美波を一人にしちゃいけなかったんだ。


それなのに、俺は………




雨宮の言うとおり、俺は、どうしようもなく馬鹿で…大馬鹿で…


どうしようもなく、ガキだったんだ…