「海?」



美波は行儀悪く、口をもぐもぐさせながらそう尋ねた。




「そう。

夏休みも二週間も過ぎたっていうのに一度も出かけてないでしょ?」




俺はちょくちょく図書館に通っている、と口を挟むべきだろうか。


でもなあ…


口を挟んだところで軽くあしらわれるのがオチだろうしな。




「…というわけで海に行きましょう!」



「「嫌だ」」




俺と美波がシンクロした。


口を挟むつもりはなかったが、挟まざるをえなかった。



美波はまあ………何となく理由がわかる気がするな。




「そ、そんな………」




あからさまにショックを受ける母さん。



なんだかかわいそうに思えてくるが、とりあえずスルーだ。