はぁ…はぁ…
疲れた。
手に持っていたパンに気づき、少しずつ食べた。
家なんかにいたくない。
あんな家。
出て行きたい。
でも今は住むところがないから我慢しなければいけないんだ。
高校生になってからアルバイトして自立できるようになったらすぐに家を出て行こうと思っていた。
それにしても
ここはどこだろう。
街に出て来てしまったらしい。
それでも、そのまま人混みに流されながら歩いた。
『……い。おい!』
ハッキリ聞こえた。
愛しい声が。
低くて優しい声。
その途端、腕をグイッと引っ張られ狭い路地に連れて行かれた。
『こんなとこで何してんだよ』
『別に』
そっけなく返した。
『…送ってくから。乗れ』
ここがどこだか分からないし送ってもらうしかないと思った。
『…はい』
あえて後ろに座った。
先生もチラッと見て何も言わずに後部席に回ってきた。
路地は薄暗かったから見えなかったのかもしれない。
私の服が破れていることに。
でも先生の目は車に入った瞬間見逃さなかった。
『何を聞いても俺はお前に滅亡しない。話せ』
その言葉を聞いた途端に私の中の何かが音をたててキレた。
涙が次々に出てくる。
どうして、私はこの人の前になると弱くなるんだろう。
今まで何年間も一人で乗り越えて来たのに。
この人の前になると体が勝手に素直になってしまう。