俺は動揺した。

まーた、何か勘違いしているのか?

彼女は再び、深いため息をついた。

「もう、会えないわね」

俺と彼女が知り合ったのは3年前だ。

当時の俺には、特定の彼女らしき存在の女がいなかった。

俺は自分のルックスは人並み以上だと思っている。

性格だって、悪くはない。

彼女ができないのは、仕事が忙しすぎた。

俺の仕事?秘密だ。

もちろん、彼女にも、まだ打ち明けていない。

出張便利屋みたいなコトをしていると話している。

そこで恋人となりうる人と知り合うことはない。

そろそろ30になるというのに、このままではイケナイ。

と思って・・

出会い系サイトで<恋人募集>をしたところ、驚くほど、あまたの老若女から候補のメールを貰った。

ともすると、結婚相手になるかもしれない。

俺は、慎重に多股をかけた。

が、彼女たちとは、なかなか会う時間が持てず、

メールのヤリトリしかできない俺にシビレをきれしてか、

1年もすると、残った女は、隣町に住む今の彼女ひとりだった。

知り合って2年めの夜、彼女に初めて会った。

お互いに、歩いて帰宅できる距離にある場所で、

お互いに、入ったことのないBarにしようということになった。

そこは、彼女が見つけた。

トイレは男女兼用で、ひとつしかなかったが、小奇麗で落ち着ける店だった。

俺は、できるだけ、そこで彼女と会う時間を作った。

しかし、いつまでも<呑む>だけの付き合いで終わっている。

彼女は俺の家に来ようとも、来たいとも言わない。

自分の家に来させようともしない。

なぜか?