「はやくっ!!」



「…。」



絶っ対イヤ。



「あ~ん!!」



「…。」



絶っ対ムリ。



俺はグッと唇を噛みしめるとズイっと顔を近づけてくる菜々美を睨みつけた。



がっ、



「そんなに…あたしのコト…キライ…?」



あっ…



目の前には、突然、瞳を潤ませながら泣きそうな声で呟く菜々美がいて…



「そんなコト…むしろ大好…うぐっ!!」



………。



俺のアホ。



こんなカンタンな罠に引っかかっちまうとは…



我ながら情けね…。



俺は一瞬の隙をついて口ん中に指を突っ込んできた菜々美を見つめながら口元をヒクつかせた。



「おいし?」



「…。」



ニヤリと悪戯な笑みを浮かべながら訊ねかけてきた菜々美。



「おいし?」



「…。」



うぇっ…



口ん中に得体の知れない食いもんが…



俺は息を止めたまま菜々美を睨みつけると、



よしっ!!



こんなわけわかんねぇ食いもん、



一気に飲みこんでしまおう。



そうしよう。



俺の助かる道はそれしかねぇ。



俺はギュッと目を瞑った。



がっ、



菜々美は俺の考えてることなんて全てお見通しのようで、



「コラっ!!ちゃんと噛んで食べなさいっ。」



「…。」



「返事は?」



「…あい。」



俺は俯きながら小さく頷くと、



よしっ!!



頑張れ、俺っ!!



相手はただの“ケーキ”。



俺が作って、ちょっとだけ変わったモノになっちまったが、



元はチョコとタマゴと砂糖と…



とにかくっ!!



ウマいもんで出来てんだっ!!



いける…



ってか、いくっきゃねぇ!!



俺は大きく息を吸うとモグモグと口を動かした。