ケーキ…



いや、違う…な。



どっからどーみても、



“ケーキだったモノ”



だな。



はははっ…



俺は潰れてちょっとだけグジャっと…どころじゃねぇ“ガトーショコラもどき”を見つめながら苦笑いを浮かべた。



こりゃ“食え”って言われても絶っ対食いたくねぇな。



うんうん。



もしそんなこと言ったら、



はぁ…



それこそ菜々美にドン引きされちまう…。



でも…



なんだか捨てるのはもったいねぇし…って、



おっ!!



そうだっ!!



明日、工藤サンにプレゼントしちゃおっ♪



「ねぇ、創…」



日頃の感謝の気持ちを込めて…



「創っ!!」



「はっ!!」



グジャった“ガトーショコラもどき”の行く末を決めたその時、突然、デカい声で俺の名前を呼んだ菜々美。



俺はビクっと肩を震わせると“ガトーショコラもどき”から菜々美へと視線を移した…



瞬間、



「えっ…菜々…美。おまっ…何して…」



「えっ?何って…味見?」



目の前にはあの“ガトーショコラもどき”を指で摘み、口に運ぼうとする菜々美の姿。



「やっ…やめ…」



俺は口元を引きつらせながら手を伸ばすと、菜々美の腕を掴もうとした。



がっ、



「いただきまぁす。」



スカッ…



「あっ…」



あと1秒。



あと1秒早ければ…



俺は嬉しそうに“ガトーショコラもどき”を口にした菜々美を見つめながらポカンと口を開けた。