なんなんだよ、



一体…。



俺以外の“俺”がいるわけねぇだろうがっ!!



っていうか、



「“サキ”って誰だよっ!!」



「別に。大したことじゃないから気にしないで。」



「そっかぁ…大したことじゃないのかぁ…って、気になるに決まってんだろっ!!」



「あはっ。」



「“あはっ”…って…。」



俺は絶っ対に口を割りそうにない菜々美から視線を逸らすと眉間に皺を寄せながらチッと小さく舌打ちした。



こんだけ隠そうとするってコトは、



“サキ”ってヤツ…



ぜってぇ“男”だなっ!!



菜々美、受付嬢だし…



カワイイし…



どーせ取引先の“サキ”とかいうヤローに飯誘われたか告られたかして…



あぁ~!!



クソッ!!



想像しただけでムカつく!!



っていうか、菜々美も菜々美だよっ!!



俺っていう“素敵”な彼氏がいながらなにやってんだよっ!!



油断しすぎじゃ…



「ねぇ…」



「あ?」



イラつく俺をよそに、突然、声をかけてきた菜々美。



「コレ…なに?」



「は?」



俺はキッと菜々美を睨みつけると、



っんだよっ!!



俺は怒ってんだぞっ!!



気安く喋りかけてきてんじゃねぇ…



って、



「えっ!!」



いつの間にか菜々美の手の内にある紙袋…



そう。



あの“ガトーショコラもどき”入りの紙袋を見つめながら目を見張った。