迷子のコイ

「・・・そろそろ、行くね」


人気《ヒトケ》のない、美術室。

なんでだろ。
言葉がうまく出てこない。

カケルのことで言いたいこと、
もっといっぱいあったはずなのに。


「アイリ・・・」


俊哉がマジメな顔であたしを呼んだ。


「なに?」


「・・・早く忘れろよ、アイツのこと」


そう言ってあたしに手をふる。


「うん、忘れるよ」


それが早く現実になればいい。
そんな願いを込めて、
あたしは俊哉に約束した。



けれど運命は、
もう1度、あたし達を出会わせる。


強く、激しい波となって・・・。