迷子のコイ

「違うんです!!」


あたしは俊哉を掴まえて離さない
その人に言った。


「・・・違うんです
 俊哉は・・・関係ないんです。
 ・・・あたしを助けたせいで・・・カケルくんが・・・」



「・・・あんたの・・・せいなの?」


俊哉を離し
ツカツカとあたしのほうに詰め寄った
カケルのお母さんは
憎しみに満ちた表情であたしを見つめた。


あたしは以前にもその目を見たことがある。


―――――そうだ、
沙紀ちゃんと同じ目だ・・・・・。



その憎しみに満ち満ちた目は
恐ろしすぎて逆に目が離せなかった。

カケルに似た、切れ長の哀しい瞳・・・。


そのカケルの目に似た
強い瞳に吸い込まれそうになるあたしを
激しい衝撃が突き放した。


「・・・おばさんっ!!」


俊哉の声が遠くに聞こえる・・・。


彼女にぶたれたあたしは
その衝撃でその場に座り込んだ。

座り込んだその上から
強く、何度も何度も彼女があたしを殴る。


「やめろ! やめろっって!!」


俊哉の声が夜の病院の廊下に響く。

俊哉は彼女をムリヤリあたしから引き離し
ナギはこれ以上あたしにその手が届かないよう
その場からあたしを連れ去った。


「・・・おいっ! オマエ!!」


離れはじめた手術室の前から
カケルの母親の声が聞こえた。


「オマエ、2度とここには来るな!
 この疫病神!!
 カケルの人生を返せっ!!」


哀しい叫びが、あたり一面に響く。



「・・・アイリ、行くよ!!」


彼女の声が届かないところへと
あたしはただ、逃げ出したかった・・・。