迷子のコイ

「佐伯くん・・・佐伯くん・・・
 ・・・カケルゥ!!」


「・・・ッルセーよ・・・」


苦痛にカオをゆがませながら、
カレは意識を取り戻した。


「カケッ・・佐伯くんっっ!」


「・・・オマエ・・ケガは・・・?」


荒い息遣いで、カレがあたしに聞いてくる。

額から異常なほど
汗が流れ出ているカレと目を合わせながら
あたしは首を横にふる。

その言葉を聞き、
カレは力なく笑うと
再びその目を閉じた。




( ・・・カケル・・・? )


さっきまで、異常にかいていた汗が
引いていく様が見てとれた。



(・・・ヤダッッ!!・・・)




「・・・ヤダ・・・目、開けて・・・。
 カケル・・・目、開けてよぉ!!」



あたしは叫びながら
カケルの血で染まった右手で
カレのカオに触れた。

血がたくさん流れてるせいだろう。

カレの体は、冷たくなっていた。



するとカレは
ゆっくりとまた目をあけ
力なく、あたしの頬に手を伸ばす。


「・・・泣くな・・・」






「・・・泣くな、『アイリ』・・・・」



それはカレが、
はじめてあたしを『名前』で呼んでくれた瞬間だった――――――。