結局、俺はいくら待っても教室に戻ってこない彼女を探しに音楽室兼吹奏楽の部室に行った。

吹奏楽部長だった彼女なら、絶対にそこに居ると思った。

夕方になり、学校に残っている人は殆ど居ない。夕陽が射す音楽室に2つのシルエット。俺の勘が当たっていたことを知った。

1つは間違いなく、彼女。

誰かと寄り添って何か話している。

「先輩も……卒業なんですね」

「そうだよー。……大槻クン淋しいの?」
大槻……その名前に心当たりがあった。

大槻明仁、彼女の次の吹奏楽部長。

「彼は部内一演奏が上手なんだよ」彼女は以前そう話していたのを覚えてる。

「……淋しいですね。俺、先輩のコト好きですから」

「えっ」

「先輩、付き合って下さい」

この時彼女は断るだろうと思っていた。
根拠もないのに……ただ、そう思いたかった。

「……私も好きだよ。宜しくお願いします」

彼女の姿が朱いのは夕陽のせいだと分かっているのに……。

これ以上、彼女の姿を見たくなかった。



その日の帰り道、どのようにして帰ったのかは覚えてなくて

……ただ、ただ早くその場から離れたかった。