「もう二度とよしに会えないんだよな…」

声をかけてきたのは彼だった。

慌てて次から次へと零れ落ちる涙を拭おうとしたけど、

カバンも全て待合室に置いてきた私に拭うものを持ってなかった。

「もう、時間だって……」

それは由那姉が完全に骨へと変わったことを告げる合図。

家族に代わって彼が私を探しに来てくれたのだろう。

「行きたくない」

由那姉が骨になった姿を見たくない。

私の中で美しい由那姉のままにしておきたかった。

「じゃあ……隣いいか?」

「やだ」

「ワガママ言うな、ガキ」

いつものように私の主張を無視して彼は私の隣に座る。

「……使った後で悪いけど」

そう言って彼が差し出したのは薄ピンクのハンカチ。

由那姉の最後のクリスマスプレゼントだった。私も由那姉と一緒に決めたから、知ってる。

そのハンカチは少し湿っていた。

それで顔を覆うと、少し塩っぽい香り。

葬儀中一切涙を流さなかった彼でも、人知れずどこかで泣いたのだろうか……



そう考えただけで
……また泣けてきた。