全問正解すると先生はいつも頭を撫でてくれた。

先生には歳の離れた妹がいて、家で教えている時の癖でそうしてしまうらしい。

先生の大きくて温かな手で撫でられると、先生に包まれている感じになる。

子供扱いをされていることは分かっていても、それをまた感じたくて、嫌いな数学でもまた頑張ろうって思えた。

「私、やれば出来る子なんです☆」

「まだまだ数Ⅰの導入編やけん油断するなよ。先は長いぞ☆今日はこれで終わりやけどな。宿題はこの次の1ページ全部」

先生は笑顔でさらりと恐ろしいコトを言う。

「多いですよッ!もっと減らして下さい」

「蜜花だったら出来るだろ。少ない位なんだけどなぁ~」

「いやいやいや……」

「それとも、もっと俺の授業受けたい?」

「嫌です☆」

「俺も。蜜花とお喋りする方が好き。やけん今日もさっさと問題解いてもらったし」

先生は笑顔でさらりとドキッとするコトを言う。

「……まさか?」

「まさか本当に15分で解くとは思わなかった。しかも全問正解」

「えっ……先生もしかして?」

「蜜花とお喋りしたいから問題早く解いてもらっちゃった☆」

本当に先生?……なんて思う時もあるけど、教え方や生徒の扱いが巧いし、面白いし、一緒にいて落ち着く人で

この先生以上の『先生』はいないと思った。

そう、思った。