「着いたで」

頂上に着くと、そこは一面夜桜の世界が広がっていた。

ライトアップはしていないので、辺りは薄暗かったけれど

月明かりでも充分桜の美しさを引き立たせていた。

「めっちゃ!!綺麗やろ?」

すぐ傍にいる先生が嬉しそうに微笑む。
相変わらず、私の右手からは先生の温もりが伝わっている。

離すタイミングが分からなくて、離したくなくて
先生が切り出すまで繋いだままでいようと思った。

「すごい……です」

風も適度に吹いて、花びらが舞う。

「あー……寒くない?」

「ちょっと……でも、こんな綺麗な景色が見られるなら我慢しますよ」

「よかった。って……あー突然誘ってごめんな」

「いえ。むしろ誘っていただいてありがとうございます」

「そう言ってもらえて本当によかった」



ほっとした

先生の綻んだ表情も愛おしいと思う。



「でも、どうして突然に誘っていただいたのですか?」

「あー……蜜香の入学祝いに、さ。それに……」

「それに?」

「……水曜日が待ち遠しかったんだよ」

「え?」

先生の真意がよく分からない。


























































「………蜜香の制服姿早く見たかったから」



見上げた先生は耳まで真っ赤にして

私と目が合うと、気まずそうに視線を桜に向けた。



「……制服似合います?」

なんだか私も先生を見られなくて、一緒に桜を見ることにした。

「……めちゃめちゃ似合ってるよ、……可愛い」

耳まで真っ赤にした先生がぽつりと言ったその一言は

いつもの軽いノリや冗談ではないから

私の心臓は張り裂けそうで、苦しくて……