アルトサックス担当の吉田先輩は端正な顔立ちで身長は高く、長めの茶髪にシンプルなアメジストのピアスが目立っていた。

これで寡黙だったらただの校則違反の恐い人だけど

「ごめんなー…もう1人3年の先輩が居るんだけど、生徒会の仕事で忙しいみたいで」

「どんな先輩なんですか?」

「んー…蜜花ちゃん危険な気が……ま、多分そのうち会えるよ……きっと。そうだ、蜜花ちゃんってどこ中やったん?」

現在楽器練習よりお喋りばかり。楽器は机の上に置いたままだった。

吉田先輩は全然恐くない、とても明るい人……と言うか、何かさっきから心の中に引っ掛かっていた。

……勿論、先輩の濁すような言葉も気になったけど。

「陽光中です」

「アノめっちゃ人数少ない学校?」

「ご存知なんですか?」

全校生徒60名の陽光は地元の人間でも知らないような小さな中学校。

「去年ブラス部の県大会準優勝してたじゃん。人数めっちゃ少ないのに一人一人の音がすっげーキレイだったのが印象に残ってるよ」

陽光のブラスを知っている人がいるとは思わなかった。

「……結局、優勝出来なかったんですけどね」

中学校3年、ベストの状態で臨んだ最後の大会。今年こそは優勝出来るかもって陽光中の誰もが思ってた。

結局、また人数不足で準優勝止まりだった。優勝しないと全国大会まで進めないのに。

「今年優勝したらええやん」

ぽんぽんっと吉田先輩から頭を撫でられた。

温かくて大きな手……

分かった、さっきまでの違和感。
















ふっと見上げたその顔はなんとなく……雰囲気が『先生』に似ていた。