長い、長い沈黙の空気を打ち破ったのは私でも友梨でもなかった。

私達が暫く注文をしなかったので、痺れを切らした喫茶店のウェイトレスだった。

「ご注文はお決まりですか?」

「あ……えっと、イチゴのタルトとホットココアをください。友梨は……?」

「……ホットコーヒー」

未だに友梨が怒っている理由が分からない。

小学校から一緒の友梨。

しっかり者の友梨に何度も怒られた。

「人の話を聞きなさい」とか「忘れ物が多すぎる」とか……数えたらキリがない位。

だけど

こんなに怒っている友梨は初めて見た。

「友梨、ごめんね」

「……どーせ蜜花はなんで私が怒っているか分からないでしょ」

「……うん」

友梨の言葉が、視線が、冷たい。

「まぁ……蜜花に悪気がないって理解してるけど……で、その後川村クンと連絡取った?」

「……取ってない。卒業式の時には私携帯持ってなかったから」

親が携帯を買ってくれたのは塾に通い始めてから。

だから、私の携帯のアドレスには親と友梨と卒業式の後に会った友達数人しか登録されていない。

「……そっか。……ねぇ、蜜花は本当に心の底から好きな人っていないの?」

「好きな人……」

「もちろん、恋愛感情で」

周囲に『恋愛感情』を抱くような男子は居なかった。

みんな気楽に付き合える『友人』

『恋人』とは考えられない。

でも……

「お待たせいたしました。イチゴのタルトとココア、ホットコーヒーになります」

私の答えの前にさっきのウェイトレスが注文の品を持ってきた。

「……蜜花に私の気持ちは理解出来ないよ。大人になったら教えてあげる」

「友梨……」

「さっ、食べよ。蜜花の美味しそう~私もタルト注文すればよかった」

……すごく誤魔化された気がするけど、友梨が笑顔になってくれてよかった。

……気がする。