「最近の蜜花、可愛くなったよね」

「ん……そぉ??」

入学式前日、幼なじみの友梨とショッピングを楽しんでいた時だった。

友梨の話を軽く聞き流しながら手にしたのは薄い桜色の、猫と蝶が描かれたワンピース。

これを見ていると「犬より猫派」と言っていた先生を思い出す。

先生の実家で飼っている猫『チャタちゃん』の話をしている先生はすごく可愛かったなぁ。

「デレデレ」という表現がぴったりな位頬が緩んでいたから。
その笑顔から本当に猫が好きなんだなぁーっていうのが伝わってきたから。

それだけでなく、先生はネクタイもよく猫柄のを着けていた。

「ほらッ!それ」

「ちょっ、指近すぎぎって」

友梨は私の顔を覗き込み、指を私の顔に近づける。近すぎて目を突かれると思った。

「顔、ニヤケてる」

「友梨に言われたくない」

ニヤニヤしてるのは友梨の方なのに。

「ま、アンタのコトだから自覚無いんだろうけど」

「ねぇっ、この服似合うかな?」

友梨に聞いたのはさっきのワンピース。

もう先生に私服を見せる機会は無いけれど

きっと、先生がこのワンピースを見たら極上の笑顔で「猫可愛いね」って言ってくれそうで……

その笑顔をいつか見たくて

内心、買おうと決めていた。

あと不安なのは「自分に似合うか」だけ。……似合わなくても先生は「猫」しか見なさそうだけど。

「ったく、人の話聞いてんの!?……そのワンピ似合ってるよ。蜜花っぽい。それでね、アンタ……」

「ぢゃ、買ってくるね♪」

正直者の友梨だから、絶大な信頼。彼女は絶対に似合わないモノを「似合う」と言わない。

そうと決まれば……私は即レジに向かった。

「ったく人の話を全く聞かないんだから……後で説教だからね!」

後ろで友梨の愚痴が聞こえたけど、……それは聞こえないフリをした。