「どうした?鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔をして………ていっ☆」

「いったぁ……ちょっと何するんですか!?」

思いきりよくデコピンされた。

「面白かったから」

「ひどっ!」

おでこはジンジンと痛いのに、先生は私を見て爆笑している。

「あー可笑し……あ、そーだ」

ふっと思い出したように先生は話題を変えた。

「なんですか!」

「そんな怒らなくてもいいぢゃん」

「めっちゃ!おでこ痛いんですけど」

「ごめぇんって」

先生……、そんな笑顔全開で謝られても、反省の色が全く見えませんが?……まぁ、流されるけど。

とことん先生に弱い私。

「で、なんです?」

「蜜花の入学式って今週の日曜日だよな?」

たしか、先週そのような話をした気がする。……そんな些細な会話を覚えてくれているなんて、嬉しい。

「そうですよ」

「ぢゃあ、来週は制服姿が見られるんやな」

何故か嬉しそうに微笑む先生。

今は中学校を卒業して高校入学前のため塾には私服で来ていた。

「……女子高生の制服に興味があるんですか?」

ちょっと先生と距離を置く。

「違うって!そんな離れんで」

こんなにも慌てた先生は珍しかった。必死で弁解する姿が面白くて、私は爆笑してしまう。

「冗談です。さっきの仕返しです」

ちなみにおでこはまだ痛かった。

「焦ったぁ~」

ほっと胸を撫で下ろす先生も可愛い。

「で、制服がどうかしました?」

自慢ではないが、安佐高校の制服は50年変わらないデザインで県内一安く、また県内一可愛くない。
原因はスカート。スーツみたいに後ろに切り込みがあるだけ。

試着した時、自分の姿を見てOLみたいと思った。

「……いやね、俺の母さんが安佐高出身でさ。……やけん……俺の母さんと同じ制服を着てる蜜花を見るのが楽しみやなぁ~っと思って」

……こんな言葉で制服を着るのが楽しみになる私はすごく単純だと思う。