俺はうつ向きながらも、ひたすらに歩いていた。

もう少しで待ち合わせた場所に着くという時。


「かい…!」


想い焦がれて仕方なかった愛しい声が、俺の耳をかすめた。


「な、つ…」


バッと顔を上げると、“あの場所”の前に菜都がケータイを握りしめながら立っていた。


「海、…私――」

「菜都、来て」

「え、海…!?」



俺は菜都に駆け寄ると、すぐに菜都の手を引いて“あの場所”の中に入った。