秘密~「ひみつ」のこと

「えっ、娘さん?小林さんに娘さんいらしたの?じゃぁ、会わなくちゃ、早く!」

手を摑まれて病室に入った。

「小林さん、娘さん、いらしたわよ!小林さん!」

看護婦さんが大きな声で母に呼びかける。

ベットの上に横たわる母は、
まるで子供のように小さく、
今にも消えてしまいそうだった。

母の口もとが、
微かに動く。

「ユ・イ?」

あたしのこと、
覚えてたの?

「ほら、手、握ってあげて!」

看護婦さんに促されて、
小さく縮んだ、
母の手をとった。
それは、
血の気のない、
痩せた
土色の手。

ふくよかだった、
母の手、
大好きだった、
白い、
フワフワの手、
見る影もない…

「おかあさん?」

あたしの口から漏れたつぶやき。

ここにいるのは、
あたしのお母さん?

違うよ、
ここにいるのは、
ただの、
死にかけた、
女…

「ゴ・メ・ン・ネ」

母の口元がそう動いたように思う。

そして、
母の目から、
一筋の涙が流れた…