『バシッ』

周囲の目もはばからず、
頬をぶたれた。
そして、
咲ちゃんのお母さんは、
声を荒げて
言葉を続けた。

「お母さん、あなたを養うために夜働いて、それで肝臓壊したのよ!」

「そんなの、あたしが頼んだ訳じゃありません!」

打たれた頬がヒリヒリと痛む。

でも、
あたしの心は、
空っぽ。

だってさ、
もう、
遠い昔に何処かに置いてきちゃった…

「昼間はユイと一緒にいたいからって、真知さん言ってた…寂しい思い、させたくないって」

あれは、本当の言葉だったの?

「あたしが昼間の仕事を勧めても、夜の仕事の方がお金になるから、ユイを大学まで行かせてやりたいから頑張るんだって」

そんなこと、聞いてない。

あたしに浴びせられてきた、
心無い言葉は、
何だったの?

あれは、
母の本心ではなかった?

そんなこと、
あたしにわかるわけない…

咲ちゃんのお母さんにだって、
わかるわけないじゃん…

「兎に角、会いに行ってあげて!市立中央病院よ!」

いつも優しい笑顔の、
咲ちゃんのお母さんの顔が強張る。

本気、なんだ…