由樹は、うつむいたまま今にも泣いて逃げ出してしまいそうな自分を抑えていた。

「ゆぅ~~~きぃ~~~!!」

ヒソヒソと囁かれるウワサ話を打ち消すような少し甲高い大きい声がして、ポンと後ろから肩を叩かれた。

「・・・め、ぐみ・・・」

恵美は小学校の頃からいつも一緒に遊んでいて、中学校も高校もず~っと一緒の親友だった。

「なぁ~に、暗い顔してんのよ、もう身体は平気なの?」

昔から元気でさっぱりした性格の恵美は、いつも由樹を引っ張っていく良いお姉さん役でもあった。

「うん、もうリハビリもほとんど必要ないし、病気前と何も変わりないよ」

「そう、よかった」

ニコニコと笑う恵美を見て、由樹はホッとした。

恵美は変わってない、周りにどんなことを言われようと恵美は味方でいてくれる、恵美がいてくれてよかった・・・。

「あ、教室移動の授業だから、もう行くね、また」

恵美とは、クラスが違うので休み時間か放課後しか一緒にいられない。

だけど、恵美が変わらず自分の味方でいてくれたことで、もう周りの声など気にならなくなった。


【つづく】