あの時に戻れたら【短編】

「姉ちゃん!隣の木村さんがお菓子くれた。姉ちゃん食うだろ〜」


玄関から声がした。顔を出すと渉が靴を脱いでいた。そしてお母さんがおばあちゃんと話しをしながら歩いてくる。後ろからおじいちゃんも調度帰って来て、輪に入った…。


また新しい記憶が出来上がって来た…今までの記憶はお母さんも渉も意気消沈しておばあちゃんの家に来る事も嫌がった。

でも、新しい記憶は、渉がお父さんの仏壇の前で「盆休みだから、父さん戻って来たか?いるなら一緒にばぁちゃんち行くぞ」って手を合わせていた。お父さんのしてくれた思い出の数々や、お父さんの最後の言葉で家族は沈み返らずに済んだんだ。みんな元気にお父さんを胸にしまって生きていく道を開いたんだ…。