あの時に戻れたら【短編】

お父さんは壊れた座椅子をギコギコ直していた。おじいちゃんもおばあちゃんも目を赤くして泣き腫らした顔をしていた。


「この椅子は加奈子達が壊したんだ。父さんが直してやるからなぁ」


って器用に直し始めた。


晩御飯を皆で食べて、おじいちゃんもおばあちゃんも楽しそうだった。


みんなお父さんを見る目が優しくて、本当に温かい時間が流れた。



帰り際におばあちゃんはお父さんの手を握ってまた泣いていた。息子が死ぬんだ…いくら５０を越えても息子は息子。おばあちゃんの大切な我が子はもうすぐ死ぬんだもん…当然の光景だった。