あの時に戻れたら【短編】

踏み台に足を乗せてゆっくり台に上がる。昔は踏み台を使っても、背伸びをして指先が当たる程度しか届かなかったのに、今は簡単に時計が目の前に来た。



少し台所とお風呂の方を覗き込みながら、そ〜っと時計の硝子扉を開ける。長い間開けられなかった扉は少しギー…と音を立てながら重く感じた。

何だか天国からお父さんが「コラッ」って怒ってるような感じだった。


「へぇ〜近くで見ると意外とオシャレな時計だな。」

振り子を揺すってみるけどもちろん少し揺れて止まってしまう。時計の針は4時半をさしていた。何と無く針を人差し指でクルクル回してみる。腕時計を見ながら呟く。
「今は1時20分なのにね」

おもむろに針を回して1時20分に合わせてみた。


「あっ!行き過ぎた!これじゃ1時15分じゃん」