あの時に戻れたら【短編】

窓を開けようと手を伸ばすと自分の手が透けて紅葉が手の向こうに見える。…やっぱりだ…私、今日未来へ帰るんだ…。


紅葉を見つめて目に焼き付けた。家族の笑い声や、お父さんの笑顔や声や匂い…そして、温かい温もり…。


私は全てを、この過去に来た3ヶ月間を思い出していた。


お父さんと腕を組んで歩いた日や、こっそり隠れて2人でケーキを食べた日、書斎で語り合った日…お父さんに大人になって久しぶりに抱きしめられた日…。私には全てが大切な宝物だった。



未来に帰ればお父さんとは2度と会えない…。本当は全然帰りたくない。また悲しみに伏せる家族と暮らして、毎晩泣きながら眠る生活になるなんて、堪えられない。


…お父さん…。